北九州市にぎわいづくり懇話会(事務局=北九州市小倉北区浅野3)が11月20日に発刊した市の無料情報誌「雲のうえ」23号に、10月31日亡くなった作家・佐木隆三さんの遺稿が掲載されている。
佐木さんは、1956(昭和31)年かつての八幡製鐵(せいてつ)所に就職し、作家業に専念するために1964(昭和39)年退職。その間、社内報や小説の執筆で実績を積んだ。同紙の特集「世界文化遺産登録記念 北九州の製鉄所。」に寄せた「私の青春」と題したコラムは、今年9月入院前に執筆した最後の手記になるという。
当時すでに著名な作家だった岩下俊作さんを師事したことや、後にプロレスラーに転身したグレート草津さん、マラソンの君原健二さんらとの交流、母親の反対を押し切って退職し作家業に専念した思い出などに触れている。文末には「次の世も、同じ人生を繰り返すでしょうが、どうか宜しくお願いいたします」と死期を示唆するような記述も。
佐木さんは1976(昭和51)年発表した「復讐するは我にあり」で第74回直木賞を受賞し、同作は1979(昭和54)年、緒形拳さん主演によって映画化された。映画はその年の映画賞を総なめにするなど話題となり、佐木さんの代表作ともなった。以来、実在の誘拐殺人事件や保険金殺人事件をモデルとした社会派小説を数多く出版したことでも知られている。
「雲のうえ」は3万7000部発行し、北九州市役所や市内書店などで配布している。12月9日15時から北九州芸術劇場(室町1)で行われる「お別れの会」でも配布される予定。