新天皇が即位された5月1日、郷土史家の菊池満さんに「天皇家と北九州市のつながり」について聞いた。
「古くは、初代天皇である神武天皇が『神武東征』のときに、『岡田宮(岡田神社)』(北九州市八幡西区岡田1)に滞在したという伝説が『古事記』に残されている」と言い、同神社の主祭神にもなっている。
「平家が敗北した『壇ノ浦の合戦』で、安徳天皇(1178年~1185年)が関門海峡に入水したいわれは多くの人が知っているが、入水したと見せかけて平家の公家に連れられ、小倉南区の『隠蓑(かくれみの)地区』に隠れていたという言い伝えがある」として、その地名の由来にもなった。
父親の安川敬一郎と共に石炭業を興して成功し、「明治専門学校(現在の九州工業大学)」の創立や「安川電機」設立に携わった松本健次郎が、自らの住宅と学校の迎賓館を兼ねて建てた「旧松本家住宅」には、昭和天皇(1901年~1989年)が、九州ご巡幸の際にお泊まりになった記録が残されている。「かつて小倉にあった建材メーカー『段谷産業』に視察に訪れたこともある。重工業が勃興した当時の北部九州に深い関心を寄せられていたのではないか」と菊池さんは話す。
菊池さんは、「水をめぐる諸問題に造詣の深い新天皇陛下に、水関連産業の多い北九州市にも、改めてご興味を持っていただければ」と期待を寄せる。