「小倉第一病院」(北九州市小倉北区下到津1)に勤務するインドネシア出身のメギアクバル・ジャバルディンさんが3月25日、看護師国家試験に合格した。
日本とインドネシアの間で結ばれた経済連携協定(EPA)によって、2008(平成20)年から外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の受け入れが始まった。メギアクバル・ジャバルディンさん(以下、メギさん)は第1期生として来日し、日本語習得や看護師資格受験、看護師補佐の業務などしたが、3年間の研修期間中に合格することができず、2011(平成23)年、失意のうちにインドネシアへ帰国した。
「海外で医療従事者として働きたい」と願い続けていたメギさん。現地の大学では「英語で医療を学んだので、カナダやオーストラリアなど英語圏の国に行く選択肢もあったが、日本の高度な医療現場を知り、日本で学びたいという思いが強くなった。日本語がこんなに難しいとは思わなかったが」と振り返る。今では「日本の味にも慣れ、逆にインドネシアの食べ物は味が濃すぎておなかの調子が悪くなる」とも。
「合格できずに帰国した人の中にも優秀な人材が多くいる」(同病院院長の中村秀敏さん)ことから、各地の医師会が再チャレンジプログラムを企画した。2017(平成29)年に再来日したメギさんは准看護師試験に合格し、2019(平成31)年から同病院に勤務。今年、念願の看護師国家試験に合格した。今年のEPAでの合格率が370人中、44人合格。福岡県内では5人中の2人(メギさん含む)という「狭き門」となっている。
同病院は腎臓病に特化した病院で、人工透析患者のケアが主な業務。病院内で長く過ごす透析患者に優しく語りかけているメギさんは、「(医療の性格上)患者さんとは頻繁に顔を合わせる。とても早口の患者さんの言葉が聞き取れないこともある」と苦笑する。
「イスラム教徒なので、毎日お祈りの時間をもらったり、礼拝の日の金曜を休みにしてもらったりしている」と職場からの配慮にも満足している様子。中村さんは「メギさんの、仕事に向き合う姿はほかの医療スタッフへの刺激にもなっている」と話す。
メギさんは「今後、さらに日本での勉強を続け、できれば大学にも行きたい。ゆくゆくはインドネシアに戻り、後進を指導したい」と意気込む。