西日本工業大学地域連携センター(北九州市小倉北区大門1)で2月16日~19日、遊休不動産の利活用を提案する「リノベーションスクール」が開講され、建築を学ぶ学生や不動産業、建材業、工務店関係者など約30人が参加した。
主催は、日本の建築技術を世界に広めようとするHEAD研究会「リノベーション部会」、九州工業大学建築計画研究室と同大学准教授の徳田光弘さんで組織する実行委員会。
開講は昨年に続き2回目。リノベーションの第一線で活躍する建築家やまちづくりプロデューサーなどから経験や手法を座学形式で学び、地元の人々を対象としたインタビューなどフィールドワークを交えながら展開。実際に魚町にある遊休不動産を対象に、4チームに分かれて具体的なリノベーションプランを創り上げた。
「前回は実際の物件を対象にしていなかったが、昨年リノベして開業した『メルカート三番街』の評判を聞いた他のオーナーからの相談もあり、実在する遊休不動産を対象にそれぞれチームが具体的で現実的な案を練り上げた。中にはオーナーのゴーサインが出たものもある。『小倉家守構想』やHEAD研究会、メルカート三番街に触発された人たちがこのスクールで出会い、具体的な行動を起こそうとしている」と主催者の一人、徳田さん。
北九州一の繁華街といえる「魚町」でも、近年はオーナーの世代交代などで空きテナントが目立つようになり社会問題化している。「『中心市街地活性化』という無駄な試みが幾度と無く繰り返されてきたが、まちのプレーヤーであるオーナーの方々がこうしたプロジェクトに参画して、主体性を持って行動することでまちは変わる」とHEAD研究会の清水義次さん。
近年、建築家を志望する学生は増え続けている一方で、日本国内の新築着工件数は減少傾向の状況が続いている。「建築家と言えども、建物を建築の観点だけでデザインするのではなく、不動産活用の視点も必要。もうけることができるプロジェクトを、収支計算や収益計算を含めた提案ができる建築家が求められている」と講演者の一人で、岩手県紫波町でまちづくりプロジェクトを推進する岡崎正信さん。
また、郊外の団地居住者が高齢化し、「買い物困難」「医療難民」なども社会問題化してきている。「こうしたリノベーションでまちに回帰する人が増え、人の循環が促進されると金融も活性化する」とプレゼンテーションを聞いた地元銀行関係者。
4件のプロジェクトの中には、案を練りあげる最中に、実際に「ここに入居したい」「ここでカレーパンを売りたい」という人も現れ、より現実的な具体性を帯びてきた。提案を受けた松永不動産(魚町2)の松永優子さんは「プレゼンテーションしたチームには小倉の事をよく知らない他県の方もいて、自分では気づかない客観的な意見やいいアイデアをたくさんもらった。実現に向けて前向きに検討する」と話す。