小倉を舞台にした映画「無法松の一生」の復刻を追ったドキュメンタリー作品が9月から、「Yahoo! JAPAN CREATORS Program」で配信されている。
明治時代の小倉を舞台に、「無法松」と呼ばれた荒くれ者の人力車夫と急死した陸軍大尉、その妻と子どもとの交流を描いた作品として過去4回映画化された。復刻されたのは1943(昭和18)年版で、稲垣浩監督、伊丹万作脚本、阪東妻三郎主演によるもの。公開当時内務省によって、戦後はGHQ(連合国軍総司令部)によっていくつかのシーンが削除された経歴を持つ。
同映画の撮影カメラマン・宮川一夫さんの助手を長年勤めた宮島正弘さんによって、今年4K修復版が制作され、戦後75年の節目となった今年の「ベネチア国際映画祭」で上映された。検閲によって不完全となってしまった1943年版を、稲垣監督が再びメガホンを取り再編集した1958(昭和33)年版が同映画祭で「金獅子賞」を受賞したという歴史もある。
ドキュメンタリーは、宮島さんのプロジェクトを知った監督の山崎エマさんが「政府の意向に従い、ほとんど戦意高揚映画しか制作されていない時代」(字幕ママ)の映画業界の模様や、「2度の検閲で失われた18分間、2つの国に切られた作品。それでも名作と呼ばれる」など修復者・宮島さんの思いを追った。
山崎さんは「日本では、ドキュメンタリーとは年齢層の高い方が中心に見るジャンルというイメージが強いが、他の国ではドラマやフィクションに劣らない人気を誇っている。さまざまなドキュメンタリーの種類があること、それぞれの物語の伝え方を工夫し、製作者がはっきりとした視点を持ち生み出すドキュメンタリーの面白さを紹介し、日本のドキュメンタリー文化の幅を広げ深めていきたい」と期待を込める。
視聴無料。