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映画「閉鎖病棟-それぞれの朝」監督・平山秀幸さんインタビュー

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©2019「閉鎖病棟」製作委員会 

 北九州出身の映画監督・平山秀幸さんが脚本・監督をした映画「閉鎖病棟-それぞれの朝」の全国公開(11月1日予定)に先駆けて、10月4日「Tジョイ・リバーウォーク北九州」で試写会が行われた。

 舞台挨拶に立った平山さんは、「私の地元であり、原作者の帚木蓬生(ははきぎほうせい)先生の地元でもある。原作のせりふは九州弁が話されており、言わば北九州発信の映画。ここでキャンペーンを始められて嬉しい」と喜びをにじませた。

【ストーリー】
長野県のとある精神科病院。それぞれの過去を背負った患者たちがいる。
母親や嫁を殺めた罪で死刑となりながら、死刑執行が失敗し生き永らえた梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)。サラリーマンだったが幻聴が聴こえ暴れ出すようになり、妹夫婦から疎んじられているチュウさん(綾野剛)。不登校が原因で通院してくる女子高生、由紀(小松菜奈)。
彼らは家族や世間から遠ざけられても、明るく生きようとしていた。そんな日常を一変させる殺人事件が院内で起こった。加害者は秀丸。彼を犯行に駆り立てた理由とは?
引用元: 「東映」公式サイト「閉鎖病棟-それぞれの朝」

 約200人が参加した試写会から一夜明けて、平山さんに改めて原作との出合いや映画の魅力について話を聞いた。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

帚木蓬生さんの小説には、今回のような精神病患者を扱ったもののほかに、生命科学や歴史長編など様々なジャンルが有るが、「閉鎖病棟」を映画にしようとしたのは

 帚木さん作品との出合いは映画「三たびの海峡」で、熱心な読者ではなかったのですが2008(平成20)年ころ、帚木さんの友人を通じていくつか渡された本の中にこれがありました。タイトルから受けた印象では「特殊な世界や環境を描いたもの」だと思いながら読み始めましたが、読み終えて改めて思ったのは登場人物をつぶさに描いた真面目な作品だと思いました。

 当時は「すぐに映画に」とは考えていなかったのですが、傍らにあるこの本が常に気になって、手に取ったり、また読み返したりをしていました。ストーリーの何が引っ掛かったのか自分でもよくわからないのですが、ずっと心に残る作品でした。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

約10年ぶりに映画で主演を演じるという笑福亭鶴瓶さんを口説き落としたのは

 自分のプロフィールや、生前の中村勘三郎さんや笑福亭松之助師匠ら共通の方々との話題、笑福亭鶴瓶さんに演じてもらいたい梶木秀丸という役柄について、長い手紙を書いて招聘しました。

 鶴瓶さんは、現場では常に気配りの人で、ほかのキャストだけでなく、通りかかった家族などいろんな方々に声掛けをしていました。映画ではよく何々組という呼称が使われます。たとえば「平山組」のように。そういう意味で現場は「平山組笑福亭鶴瓶一座」あるいは「鶴瓶一座内、平山組」でした。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

チュウさんや梶木秀丸、由紀のほかにもたくさん個性的なキャラクターが登場した原作に比べ、ストーリーをシンプルにまとめた

 原作のクライマックスでもある裁判シーンでは、犯行に至った秀丸の証人として由紀やチュウさんがいるのですが、この3者の関係をコンパクトにまとめたほうがいいと考えました。被害者の由紀、仇を討つ秀丸、その脇にチュウさんという3者に絞り、秀丸を真ん中に据えたストーリーにしました。

 クランクイン時に組み立てた映画のイメージとはかけ離れた映画作りもしました。原作では50歳くらいのチュウさんですが、映画では綾野剛さんが38歳のチュウさんを演じています。由紀を演じた小松菜奈さんも、自分の年齢からするとジェネレーションギャップが大きい宇宙人で、病んだ演技ができるのかと思いましたが、いざクランクインすると見事に地球人でした。(当初のイメージと違っても)これはこれで映画として成立しているし、そうしたことでまた新しい事に気づき、さらに違う側面を見せることが出来る。撮りながら次々に作っていくような手法です。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

原作にはない副題の「それぞれの朝」という意味は

 帚木さんによると、もともと小説のタイトルは「休鳥たちの杜」だそうで、飛び立とうとする鳥が一時休む森、そこから出るに出られない鳥たちのもどかしい姿をイメージしました。「閉鎖病棟」というタイトルの言葉の響きや字面が、暗い印象を持つので、それを軌道修正するような意味合いもあります。

 原作も映画もエンディングは裁判シーンですが、秀丸は今後長い裁判を経ることになるでしょう。由紀は看護師してとしての厳しい道を歩み始め、チュウさんは社会復帰できるだろうか…など、すべてが明るい希望に満ちているわけではないと思います。それでも半歩踏み出した三者三様の姿を描いたという意味で「それぞれの朝」という副題を付けました。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

30年の監督生活で初めて脚本家としても映画に取り組んだ

 脚本家の立場では、せりふをたくさん詰め込むことでストーリー作りをしましたが、いざ映画を撮り始めて監督の立場になると、せりふを削ってなるべく映像での表現にしたくなる自己矛盾という難しさを経験しました。 今の時代は、色んなものを重ねていく情報社会ですが、自分は削って削ってよりシンプルにしていく映画作りや生き方を好んでいます。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

映画を撮り終えて…

 大先輩の映画監督に「映画を撮ったら3年間は反省するな」と言われたことがありますが、何度映画を作っても出来上がった瞬間は「最初から撮り直したい」と思うものなのです。しかし、自分の映画を冷静に見る時間は必ず必要で、10年くらい経って、当時は否定していたシーンや間(ま)などを振り返ると、「これはこれで必要だったな」とも思えてくるものです。「閉鎖病棟」もそんな作品の1つになると思います。

©2019「閉鎖病棟」製作委員会

【作品紹介】
出演: 笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈
坂東龍汰、平岩紙、綾田俊樹、森下能幸、水澤紳吾、駒木根隆介、大窪一衛、北村早樹子、大方斐紗子、村木仁
片岡礼子、山中崇、根岸季衣、ベンガル、高橋和也、木野花、渋川清彦、小林聡美
脚本・監督: 平山秀幸
原作: 帚木蓬生「閉鎖病棟」(新潮文庫刊)
音楽: 安川午朗
主題歌: K「光るソラ蒼く」(ビクターエンタテインメント)
配給: 東映
上映時間: 116分

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