北九州市が設置を進めている「平和資料館(仮称)」(北九州市小倉北区城内4)の懇話会が8月26日開かれ、市は展示内容や運営手法に対する意見聴取を行った。
360度シアターでは、米軍戦略爆撃機B-29が日本本土を初めて直接爆撃した「八幡大空襲」を紹介する予定
懇話会には、市内大学教授らのほか、「長崎原爆資料館」館長・篠崎桂子さんや「呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)」館長・戸高一成さんらが名を連ねる。
北九州市は2010(平成22)年、「北九州市非核平和都市宣言」を制定した。宣言中「私たち北九州市民は、長崎に投下された核兵器の第一目標が小倉であったことを重く受け止め、核兵器の恐ろしさ、戦争の悲惨さ、平和の尊さを、次の世代に伝え、核兵器のない、戦争のない、平和な世界を築いていかなければなりません」(原文ママ)と訴え、核兵器の廃絶とともに平和世界実現への理念を掲げている。
市は、2018(平成30)年、市民約100人にインタビューし、1944(昭和19)年6月米軍の戦略爆撃機B-29が八幡上空に多数飛来し、「官営八幡製鉄所(現日本製鐵)」や市街地を焼夷弾(しょういだん)爆撃した「八幡大空襲」などをまとめた体験談「後世に語り継ぐ北九州市民の戦争体験」を発表した。同館は、宣言のシンボル的な存在としてや、体験談などを通じて戦争の悲惨さや平和の大切さ、命の尊さを後世に伝える施設として計画されている。
懇話会で発表された資料によると、工業都市として発展した北九州に、陸軍師団や軍需施設が設置されたことを紹介する「戦前の北九州」、戦時下の市民の暮らしや子どもたちの遊び、学校生活を紹介する「戦争と市民の暮らし」、四大工業地帯の一つとして空襲の標的となったことや市街地の被害、市民の戦争体験に触れる「空襲の記憶」、原爆投下が天候不順によって小倉から長崎に移された史実を、少年を主人公にしたアニメーションで360度シアターに投影する「運命の昭和20年8月8日・9日」、戦後の混乱期の市民の暮らしや復興の様子、北九州市の誕生などを紹介する「戦後の復興」の5つのゾーンを主軸に展開する予定。
小倉陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)で作られた風船爆弾の模型(実物の5分の1)や、B-29が投下した焼夷弾の原寸模型など展示物の概要も披露された。懇話会に参加した委員からは「(展示物の)360度ムービーを体験した子どもは沈痛な気持ちになるだろう。その後の『戦後の復興』コーナーの表現次第で、未来に希望を持てるかどうかが分かれると思う」などの意見が出た。
市では今後、戦時下の暮らしを伝える当時の日常生活用品や軍装品、まちの風景を捉えた写真・映像、新聞、ポスターなどの資料提供を呼び掛けていく。
同館は、北九州市立中央図書館そばの予定地で、本年度建築工事に着手し、2022年に開館する予定。