写真家・木寺一路(かずみち)さんの写真展「あはれ~澱(よど)みの底に光るものありて」が12月16日、「井筒屋小倉店」(北九州市小倉北区船場町)7階の「小画廊」で始まった。
木寺さんによると「深く心の奥底に感じる静寂に似た美しさ、悲哀、感動をテーマに」撮りためた36点の写真を並べる。2年前から湿板(しっぱん)写真の技法にも取り組んでおり、写真展では7枚の湿板写真も展示する。
19世紀の半ば、写真技術黎明期の約20年間でしか使われなかった湿板写真は、「薬品の不安定さや、暗室のそばでしか撮影できないなど手間の多さがネックになり、現代ではこの技法を使う人はほとんどない古典的な技法」という。木寺さんは、必要な薬剤入手のための事業所登録や、移動先での現像のために車に暗室を設置するなどの工夫をし、撮影技術を復刻した。
「いまやデジタル写真が一般的で、スマートフォンで誰でもきれいな写真が撮れる時代だが、ドットで構成されるデジタルとは違い、湿板では無限のグラデーションが表現できる」といい、現像した湿板そのものも展示している。
開催時間は10時~19時(最終日は16時まで)。入場無料。今月29日まで。展示写真は購入することもできる。