
スペースシードホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:鈴木健吾、以下「スペースシードホールディングス」)は、2026年8月14日、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州スレマン県にあるガジャマダ大学(Universitas Gadjah Mada、以下「UGM」)Faculty of Biology のサウィッ・サリ研究ステーション(Stasiun Penelitian Sawit Sari)を視察しました。本視察には、福岡県久留米市に本社を置くAAI株式会社(アジア・アフリカ リサーチ・コンサルティング&インベストメント)において会長を務める中村廣秀氏も同席しました。
参考情報:UGM サウィッサリ研究ステーション(Stasiun Penelitian Sawit Sari)
UGM Faculty of Biology が運営する研究圃場で、ジョグジャカルタ特別州スレマン県チョンドン・チャテゥル(Dusun Gejayan, Condong Catur, Depok, Sleman)に所在します。リュウガンの栽培・増殖(接ぎ木、取り木、剪定、病害虫防除等)に関する研究と生産者向け技術研修のほか、マンゴー、ドリアンなどの果樹育種、園芸作物やラン等の保全研究が行われています。
視察の背景
当社は2025年8月より、UGM Faculty of Biology の Budi S. Daryono 教授、Eko Agus Suyono 教授、およびAPKM(Asosiasi Petani Kelengkeng Mandiri)会長アフマッド・ジャナン氏らとともに、インドネシア国産改良品種のリュウガン(Longan/現地名 kelengkeng)「New Crystal」を核とした、ジョグジャカルタ地域の産業振興モデルについて協議を重ねてきました。UGMが2024年に新設したIntegrated Genome Factory(IGF)を活用したゲノム解析・遺伝子発現プロファイリングの可能性についても検討を進めています。
今回の視察は、その科学的基盤を支える「現場」、すなわちUGM生物学部が管理する実験圃場を実際に確認し、研究成果が苗・栽培・収穫物としてどのように実装されているかを把握することを目的として行いました。サウィッ・サリ研究ステーションは、リュウガンをはじめとする果樹の育種と苗の増殖、栽培技術の開発・研修を担う拠点です。当日は、圃場において、同ステーションでリュウガンの栽培・増殖を担当し、生産者向け研修の講師も務める Yusuf Sulaiman 氏(S.I.P.)に案内いただきました。

Yusuf Sulaiman 氏による苗の紹介の様子
サウィッ・サリ研究ステーションの圃場の視察の様子
1. 産業の起点としての「苗の質」――接ぎ木による増殖方法の理解
視察ではまず、リュウガンの苗の増殖拠点としての機能について説明を受け、接ぎ木をはじめとする繁殖方法の違いが苗の良否をどのように左右するかを把握しました。
果樹においては、種子から育てる実生苗では親と同じ果実形質が再現されず、結実までに長い年数を要します。一方、優良個体の枝を穂木として台木に接ぐ接ぎ木や取り木による栄養繁殖では、母樹の形質をそのまま受け継いだ苗を得ることができ、結実開始も早まります。さらに、穂木の採取元となる母樹の選定、台木との親和性、接ぎ木後の管理の巧拙が、その後の樹勢・収量・果実品質を長期にわたって決定づけます。
つまり、産地としての品質の均一性と再現性は、圃場での栽培以前に「どの株から、どのような方法で苗をつくるか」という段階で大きく規定されます。当社は今回、この苗の増殖という最上流の工程が、産業化・ブランド化の起点として決定的に重要であることを、現場の実務とともに確認しました。
2. 高付加価値な商業作物を生産するポテンシャル
あわせて、同ステーションで栽培されているメロンなどの果実を試食しました。熱帯地域における果樹・果菜の栽培環境と、実際に収穫された果実の品質を確認したことにより、当地においてリュウガンにとどまらず、高付加価値の商業作物を生産することが十分に可能であるとの手応えを得ました。
研究機関の圃場において品種と栽培方法の検証が行われ、そこで確立された技術が生産者へ移転されていくという流れは、単発の輸出商材ではなく、地域に根づいた産業を形成するうえで重要な意味を持ちます。
3. 「おいしさ」を主観から客観へ――糖度・アロマ成分の計測と機能性評価によるブランド化
視察を通じて当社が特に可能性を感じたのは、味の評価を科学の側面から客観化するアプローチです。
果実の価値は、これまで「おいしい/おいしくない」という主観的な評価に依存しがちでした。しかし、糖度、酸度、糖酸比といった指標に加え、香りを構成するアロマ成分を分析機器によって定量することで、味わいを再現可能なデータとして記述することができます。さらに、含有する機能性成分とその生理作用について調査を行えば、「おいしさ」に加えて「体にとっての価値」という第二の軸を提示することが可能になります。
こうした客観的なデータは、品種や産地の優位性を科学的根拠とともに主張するための基盤となり、栽培方法の改善やポストハーベスト条件の最適化に対しても、明確な評価指標を与えます。当社は、UGMが有する研究基盤とサウィッ・サリ研究ステーションの圃場を組み合わせることで、UGMとともに当地の作物をブランド化していくことができる可能性を確認しました。
4. 果実発酵という出口――「株の選択 × 育て方から収穫まで × ポストハーベスト」
さらに、果実の発酵についても可能性があることを確認しました。発酵は、生鮮のままでは輸送や保存が難しい果実に新たな用途と保存性を与えるだけでなく、香気成分の変化や成分の変換を通じて、原料とは異なる価値を生み出す工程でもあります。
当社は、果実の価値が、
- 果実の株の選択(どの母樹から、どの方法で苗をつくるか)
- 育て方から収穫まで(栽培管理、収穫時期の見極め)
- ポストハーベスト(選別、貯蔵、加工、発酵)
という各段階の積み重ねによって決まり、そのそれぞれに科学的なアプローチによる価値創出の余地が数多く存在することを、今回の視察を通じて改めて認識しました。

サウィッ・サリ研究ステーションの圃場で栽培されているリュウガンの苗
サウィッ・サリ研究ステーションで栽培されたリュウガンの実
今後の展開
当社は今後も、UGM Faculty of Biology およびAAI株式会社をはじめとする関係各社とともに、苗の増殖から栽培、収穫、ポストハーベスト、機能性評価に至るまでを一気通貫で扱う枠組みの構築を検討し、ASEAN-日本の循環型フード・アグリモデルの実装例となる取り組みとして具体化を進めてまいります。
スペースシードホールディングス 代表取締役 鈴木 健吾のコメント

スペースシードホールディングス 代表取締役 鈴木 健吾
「苗をどうつくるかという入口から、収穫後の加工・発酵という出口まで、バリューチェーンのすべての段階に科学が効く余地があることを、現地の圃場で改めて確認しました。とりわけ、接ぎ木による苗の良否が数年後の果実の品質までを規定するという事実は、産業化を考えるうえで示唆に富むものでした。
おいしさを『感想』ではなく糖度やアロマ成分といった測定可能な指標として扱い、機能性の評価まで踏み込むことで、UGMとともに、ジョグジャカルタの作物を世界に通用するブランドへと育てていけると考えています。」
AAI株式会社について
AAI株式会社(アジア・アフリカ リサーチ・コンサルティング&インベストメント、本社:福岡県久留米市通町356-1、会長:中村廣秀)は、インドネシアをはじめとするアジア・アフリカ地域における調査・コンサルティング・投資事業を展開しています。スペースシードホールディングスは2025年1月にAAIグループへ資本参加しています。
https://www.aai-jp.com/
スペースシードホールディングス株式会社について
スペースシードホールディングスは、「SFをノンフィクションにする」をミッションとして、投資活動、研究活動ならびに事業創出を行う宇宙系ディープテックベンチャービルダーです。発酵とロンジェビティー技術の社会実装を支援する「Fermentation and Longevity Fund」プログラムの運用などを軸に、社会課題を解決する事業の創出に取り組んでいます。2040年までに各種ステークホルダーとともに、人類が宇宙空間で居住するのに必要な技術を揃えることを目指しています。
https://ss-hd.co.jp/